花囲い

最終話 鼻歌

 冬が来た。

 制服の上からコートを着るようになって、吐く息が白くなるころには、私の周りからうわさは消えていた。

 もう誰も、「付き合っているの?」とは聞かない。

 その必要がなくなったからだ。みんな、そういうものだと思っている。

 井𡈽くんと私は一緒に登校して、一緒に帰る。昼休みには同じ教室で話をする。放課後は図書室へ寄ることもある。

 私がなにも言わなくても、井𡈽くんは隣にいる。誰も不思議に思わない。それが日常になったから。

 私だけが、その日常を受け入れられなかった。

 最初のころは何度も否定した。

「違う」
「付き合ってない」
「誤解だから」

 そう言うたびに、みんな困ったように笑って「照れなくてもいいのに」なんて言った。その繰り返しの中で、ある日から私は否定するのをやめた。

 もう、疲れたからだ。
 なにを言っても変わらない。
 言葉は、水の中へ落ちる石みたいに沈むだけだった。
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