転生したらひとりぼっちだった私、最強国の冷徹大公に拾われる~不愛想な最強保護者のもとで、稀代の才能が花開きました~
第一章 竜大公シリウス・ドラン
「おはようございます」
王宮厨房に着くと、早番の使用人たちが卸業者から届いた食材を各班に仕分けしていた。
この厨房で作る食事は、王家の方々のものと王の仕事を補佐する貴族の方々、そして王宮に詰めている兵士の分も任されている。
かなりの人数の食事を作らなくてはならないため、厨房は広く調理人も使用人も多い。私のような子どもでも野菜を洗ったり皮を剥いたりという仕事があり、休む暇もなく忙しいのだ。
「おはようネリー。これ、今日の野菜。洗ってから、いつものようにカットして」
と、忙しなく大きな籠を手渡してきたのは、野菜調理班の長、アッシュ。三十代で恰幅のよい男性だ。最近長女が生まれたらしく、休憩時間にはいつも娘の自慢をしている子煩悩な人である。王宮厨房は野菜、肉、パンと部門ごとに班を分けて作業をしており、アッシュは私の上司だ。
はい!と、大きく返事をして、外の井戸で水を汲み、野菜の泥を落とす。最近穏やかな気候が続くせいか、井戸水はそんなに冷たくなく、野菜を洗う時も苦痛じゃない。でも、毎日の水仕事は肌に負担がかかり、指には無数のひび割れができて手の甲まで荒れていた。
野菜を洗って厨房に戻ってくると、アッシュと食料品卸店の店主レナードが話をしていた。
「本当にプリマヴェーラの力はすごいねえ。先月は南の町で新種の野菜が発見されて、今週は北のハセン村にリンゴが大量に実るなんてな! ほら、これがそのリンゴ。色も味も香りも一級品だ!」
興奮気味に話しているレナードに、アッシュも相槌(あいづち)を打つ。
「そうだな。こうして豊かな生活が送れるのもアルマ様のおかげだ」
「そういえば、来週のアルマ様の誕生祭、あのドラン公国の竜大公が招待に応じたって話、もう聞いたか?」
「いや、初耳だ。ふうん、そうか。あまり表に出ない竜大公も、アルマ様がプリマヴェーラだと聞いて、見てみたくなったのかもしれないな」
「ああ! アルマ様がいれば、そのうち我がパルティナ国が、ドラン公国の国力を上回ってしまうかもしれないね」
レナードは豪快に笑い、アッシュは呆れたように微笑んだ。
彼らの話に出た『アルマ様』とはこのパルティナ国の第一王女のこと。彼女は『プリマヴェーラ』という世界に祝福された神子であるらしく国民にとても人気がある。
プリマヴェーラは別名『芽吹きを呼ぶ者』と言われており、数百年に一度の周期で人として生まれ、存在しているだけで数多の作物が実り豊作を約束するという。王女アルマがこの国に誕生してから、不作の多かったパルティナ国は豊作が続いている。同じ年に生まれた子は何十人もいたが、誰かが「アルマ様がプリマヴェーラだ」と噂(うわさ)をし始めると、それが瞬く間に広がり皆信じてしまったのだ。
王宮厨房に着くと、早番の使用人たちが卸業者から届いた食材を各班に仕分けしていた。
この厨房で作る食事は、王家の方々のものと王の仕事を補佐する貴族の方々、そして王宮に詰めている兵士の分も任されている。
かなりの人数の食事を作らなくてはならないため、厨房は広く調理人も使用人も多い。私のような子どもでも野菜を洗ったり皮を剥いたりという仕事があり、休む暇もなく忙しいのだ。
「おはようネリー。これ、今日の野菜。洗ってから、いつものようにカットして」
と、忙しなく大きな籠を手渡してきたのは、野菜調理班の長、アッシュ。三十代で恰幅のよい男性だ。最近長女が生まれたらしく、休憩時間にはいつも娘の自慢をしている子煩悩な人である。王宮厨房は野菜、肉、パンと部門ごとに班を分けて作業をしており、アッシュは私の上司だ。
はい!と、大きく返事をして、外の井戸で水を汲み、野菜の泥を落とす。最近穏やかな気候が続くせいか、井戸水はそんなに冷たくなく、野菜を洗う時も苦痛じゃない。でも、毎日の水仕事は肌に負担がかかり、指には無数のひび割れができて手の甲まで荒れていた。
野菜を洗って厨房に戻ってくると、アッシュと食料品卸店の店主レナードが話をしていた。
「本当にプリマヴェーラの力はすごいねえ。先月は南の町で新種の野菜が発見されて、今週は北のハセン村にリンゴが大量に実るなんてな! ほら、これがそのリンゴ。色も味も香りも一級品だ!」
興奮気味に話しているレナードに、アッシュも相槌(あいづち)を打つ。
「そうだな。こうして豊かな生活が送れるのもアルマ様のおかげだ」
「そういえば、来週のアルマ様の誕生祭、あのドラン公国の竜大公が招待に応じたって話、もう聞いたか?」
「いや、初耳だ。ふうん、そうか。あまり表に出ない竜大公も、アルマ様がプリマヴェーラだと聞いて、見てみたくなったのかもしれないな」
「ああ! アルマ様がいれば、そのうち我がパルティナ国が、ドラン公国の国力を上回ってしまうかもしれないね」
レナードは豪快に笑い、アッシュは呆れたように微笑んだ。
彼らの話に出た『アルマ様』とはこのパルティナ国の第一王女のこと。彼女は『プリマヴェーラ』という世界に祝福された神子であるらしく国民にとても人気がある。
プリマヴェーラは別名『芽吹きを呼ぶ者』と言われており、数百年に一度の周期で人として生まれ、存在しているだけで数多の作物が実り豊作を約束するという。王女アルマがこの国に誕生してから、不作の多かったパルティナ国は豊作が続いている。同じ年に生まれた子は何十人もいたが、誰かが「アルマ様がプリマヴェーラだ」と噂(うわさ)をし始めると、それが瞬く間に広がり皆信じてしまったのだ。