音のない世界
第2章
優花〜
高校に入学して一週間。
長濱高校は私にとって都合が良かった。
テストの点さえあれば、割と自由。
それだけで十分だった。
朝四時。
新聞配達
家に帰れば松永が寝ている。
音を立てないように朝ご飯を作る。
お皿を洗い、制服に着替える。
長袖のシャツ。
スカートの下には今日もスウェット。
鏡を見る。
昨日殴られた頬は髪で隠れた。
「……よし。」
耳栓をケースから取り出し、耳にはめる。
世界の音が遠くなる。
これでいい。
誰の声も聞こえなくていい。
学校へ着く。
人の多い廊下は嫌いだ。
誰にもぶつからないよう壁際を歩く。
後ろから人が近付く気配。
反射的に体が強張る。
──また殴られる。
そう思った瞬間。
「危ない。」
低い男の声。
耳栓をしていても少しだけ聞こえた。
次の瞬間。
私の目の前に落ちてきた植木鉢。
ガシャン。
土が散らばる。
一歩前に進んでいたら、頭に当たっていた。
私は植木鉢を見る。
そして、後ろに立つ男を見る。
見たことがある顔。
……誰だった。
思い出せない。
男は私を見ていた。
私は何も言わない。
言う必要がない。
そのまま横を通り過ぎる。
後ろで誰かが叫んでいる。
先生だろう。
周りも騒いでいる。
全部どうでもいい。
私は教室へ向かった。
高校に入学して一週間。
長濱高校は私にとって都合が良かった。
テストの点さえあれば、割と自由。
それだけで十分だった。
朝四時。
新聞配達
家に帰れば松永が寝ている。
音を立てないように朝ご飯を作る。
お皿を洗い、制服に着替える。
長袖のシャツ。
スカートの下には今日もスウェット。
鏡を見る。
昨日殴られた頬は髪で隠れた。
「……よし。」
耳栓をケースから取り出し、耳にはめる。
世界の音が遠くなる。
これでいい。
誰の声も聞こえなくていい。
学校へ着く。
人の多い廊下は嫌いだ。
誰にもぶつからないよう壁際を歩く。
後ろから人が近付く気配。
反射的に体が強張る。
──また殴られる。
そう思った瞬間。
「危ない。」
低い男の声。
耳栓をしていても少しだけ聞こえた。
次の瞬間。
私の目の前に落ちてきた植木鉢。
ガシャン。
土が散らばる。
一歩前に進んでいたら、頭に当たっていた。
私は植木鉢を見る。
そして、後ろに立つ男を見る。
見たことがある顔。
……誰だった。
思い出せない。
男は私を見ていた。
私は何も言わない。
言う必要がない。
そのまま横を通り過ぎる。
後ろで誰かが叫んでいる。
先生だろう。
周りも騒いでいる。
全部どうでもいい。
私は教室へ向かった。