卒業まで、好きでした。

もう一度だけ

秋が近づき、朝晩の風が少しずつ涼しくなってきた。

ボランティア部の活動や土曜講座。

先輩と過ごす時間は、去年より少しだけ増えた。

でも、恋の距離は変わらないままだった。

「もう諦めたら?」

友達にそう言われたこともあった。

「振られたんでしょ?」

「……うん。」

「じゃあ、つらいだけじゃない?」

そうなのかもしれない。

叶わない恋だって、私が一番分かっていた。

それでも、先輩の笑顔を見るたびに、「やっぱり好きだな」と思ってしまう。

そんなある日。

放課後、ボランティア部の活動が終わり、片づけをしていると、先輩と二人きりになる時間があった。

教室の外は、夕焼けに染まっていた。

今なら話せるかもしれない。

そう思った瞬間、胸が高鳴る。

「先輩。」

「ん?」

「少しだけ、お話いいですか?」

先輩は優しくうなずいた。

校舎の外へ出ると、秋風が静かに吹いていた。

私は深呼吸をする。

去年、一度伝えた気持ち。

もう伝えないと決めたはずなのに、心はまだ先輩を追いかけていた。

「先輩。」

声が震える。

「私……。」

先輩は静かに私を見つめていた。

「やっぱり、先輩のことが好きです。」

言葉にした瞬間、胸が締めつけられる。

先輩は少しだけ目を伏せ、それからゆっくり顔を上げた。

「ありがとう。」

その声は、とても優しかった。

でも、その次の言葉で、私はすべてを理解した。

「でも、ごめん。」

去年と同じ返事だった。

私は泣きそうになるのを必死にこらえた。

「……はい。」

それしか言えなかった。

先輩は申し訳なさそうに続ける。

「気持ちは本当に嬉しい。」

「ありがとうございます。」

私は笑顔を作った。

泣き顔を見せたくなかった。

困らせたくなかった。

だから、最後まで笑っていたかった。

先輩と別れたあと、一人で校門へ向かう。

夕焼けに照らされた帰り道は、いつもより少しだけ長く感じた。

叶わない恋。

分かっていたはずなのに、胸はやっぱり痛かった。

それでも、不思議と後悔はなかった。

好きだから伝えた。

その気持ちだけは、嘘じゃなかったから。

私は空を見上げ、小さく息を吐いた。

「……まだ、好きだな。」

誰にも聞こえないようにつぶやいたその言葉は、秋の風にそっと溶けていった。
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