手フェチ女とピアニスト

「くそ! 完璧な計画だったのに! 手フェチ女なんかのせいで!」

 捨て台詞を吐いた伊時川は、店長を振りきって逃げた。
 伊時川の仲間二人は「私達は雇われただけ!」と言い訳をしながらそそくさとレジに行った。

「涼、伊時川を逃がしていいのか?」

 店長の問いに、涼は静かに頷く。

「ああ、もうやらないだろうし。それよりも――」

 涼がくるりと由麻の方を向く。

「ごっごめんなさい!」

 由麻は頭を下げてすぐ店を飛び出した。
 涼の反応が怖くて。

「由麻、待って」

 店の外に出たところで、涼は由麻の腕をつかんだ。
 こんな状況なのに、焦がれていた手に触れられてキュンとしてしまう。

(ときめいてる場合じゃない!)

 由麻は涼の方を向き、また頭を下げた。

「私……ピアノじゃなくて、涼さんの手が目当てだったんです。騙してごめんなさい……」

 頭を下げた由麻の耳に、信じられない言葉が飛び込んで来た。

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