手フェチ女とピアニスト
「待って!」
タイトスカートなのに構わず大股で走り、逃げようとする男の手を掴む由麻。
その手を見て、由麻は叫ぶ。
「! この指の長さや指先の形、爪の形……この人が真犯人です!」
犯人と言われた男はもがくが、店長や近くにいた男性客が抑えて逃げられない。
近づいてきた涼が、「あ」と声を洩らす。
「あれっ変装していて気付かなかったが、あなたは……ピアニストの伊時川さん?」
涼の言葉に由麻がハッとひらめく。
「もしかして、この二人とグルになって、涼さんを陥れようとしたってこと!?」
由麻に指を指された、痴漢と叫んだ女性と、証拠写真だと言い出した眼鏡の男性は言葉に詰まる。
それが答えだった。
「確か伊路川って、コンクールで涼に負けてたよな。嫉妬から嫌がらせしたのか? 枯れた花束を送ったのもお前か?」
由麻に続いて店長も追及する。
人々から非難の目を向けられた伊路川は、憎々しげに口を歪めた。