あなたのほくろには、沼りません!
もし、そうなら。
崇人のことを今まで異性として見たことはないのに、想像するだけで変にドギマギする。
(それもこれも、全て泣きぼくろのせい……!)
澄花は知っていた。自分が目元にほくろがある男に弱いことを。初恋からずっと拗らせてきている、澄花のフェチである。
外見の好みという一点だけで彼氏を選んできた澄花は、散々失敗してきているというのに。
泣きぼくろがあると知った途端、自分の中で崇人の好感度が、一気に上がってしまう。
(バカなことは考えない! 岸本さんは、社内恋愛しない、って公言しているでしょ!?)
心の内で自身を叱り飛ばしながら、澄花は崇人から視線を外す。
これ以上見つめ合っていたら惚れていないのに、好意を抱いている気になってしまいそうだったから。
崇人はもちろん、そんな澄花の内心の動揺など知るはずない。
「あー、目も鼻も痒い」
ようやく落ち着いた崇人は、ハンカチで目元を拭いながら呟いた。普段と変わらぬ口調なのに、澄花の視線は、自然と目尻に向かう。
慌てて下を向き、タブレットで資料を読み込むフリをしながら、早口で同情の言葉を寄せる。
「大変ですね。花粉症も」
感情がこもっていない声。だけど、澄花は普段からこんな感じだ。
低い声なのに、気持ちを乗せて喋ると威圧感が倍増する。そう過去の男に指摘された。軽いトラウマだ。
なので澄花は、特に職場では淡々と話すことを心掛けている。
それでも喋り方が怖い、と言われることもある。が、仕事用の作っている自分だ。どう言われても傷つくことはない。