あなたのほくろには、沼りません!

黒歴史が現実になってみた

「すみません、岸本さん。遅くまで付き合ってくださって」
 澄花は運転をしながら、崇人に詫びた。
「仕事だし、気にしなくて大丈夫ですよ。むしろ新しく取引する会社の担当者と顔合わせ出来て、俺としてはラッキーです」
 助手席で貪欲な顔を見せる崇人は、生粋の営業マンの表情をしている。新たな人脈を得て、満足しているようだ。

 商品のパッケージや販促ツールを用意するのは、澄花たち販促課の仕事だ。営業課の人間は、ミーティングでああだこうだ言ってはくるが、それだけ。
 わざわざデザインを任せている会社まで足を運ぶ人間は崇人くらいである。
「主任に昇進されても、現場主義は変わらないんですね」
「そうですね。出来るだけ足を運んで、顔を合わせたい。そう考えてはいますが、役職がついて思ったように動けないことも増えましたね」
 ため息をつく崇人は、淡々と反省の弁を述べた。
「下についている奴らを上手く使わないといけないのに、どうしても自分が出張ってしまう。俺の良くないところです」
「岸本さんでも、反省することあるんですね」
 ポロリと溢れた本音。澄花が、あっ、と思った時には遅かった。
< 8 / 12 >

この作品をシェア

pagetop