俺に愛されてみないか? ~孤高のパイロットとの偽り新婚生活は熱くて甘い~
1.相容れない人
空港内の従業員専用の休憩所に向かうために廊下を進み、曲がり角に差し掛かろうとした、そのとき──。
『俺のことが好き? うん、ありがとう。うれしいよ。でも今は仕事に集中したいんだ。君の気持ちはありがたいが、しばらくは誰とも付き合う気はない』
突然耳に届いた優しい男性の声に、私こと花村伊澄はその場でピタリと足を止めた。
この声って……。
聞き覚えのある声に大きくため息をつき、めんどくさいと言わんばかりに顔をしかめる。
顔なんて見えなくてもわかる。このどこか感情のない声の主は金城宗弥、その人で間違いない。
彼は私がグランドスタッフとして働いているゴールド・エア航空の御曹司で、年齢は確か今年で三十三歳。今はまだ副操縦士だけれど、じきに機長になり、いずれは会社のトップに君臨するだろうと言われている逸材だ。
人を惹きつけるオーラを纏い、しかしそれに負けることのない整った顔に女性の心をくすぐるような甘い声。加えて高身長で爽やかな風貌だから女子社員はもちろんのこと、お客様からも絶大な人気で“空の上の王子様”なんてまことしやかに呼ばれていたりする。
とにかく、外面的に超人当たりがいいのだ。
でも私は知っている。彼の裏の顔を──。
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