俺に愛されてみないか? ~孤高のパイロットとの偽り新婚生活は熱くて甘い~
ここはなんとかして誤魔化さないと……。
そう思って頭をフル回転させていた、そのとき。
「それは悪かった。邪魔をしたな」
そう言いながら、彼は丁寧に頭を下げた。
彼からの思いもよらない言葉と態度にさっきとは違う意味で驚き、私は目を大きく見開いた。
金城宗弥は謝った? しかも私に頭まで下げて?
その声は優しいけれどどこか感情のない、告白してきた女性たちに対する声とは違う、定食屋でも聞いたことのない彼の本心からの声。空の上の王子様と呼ばれている副操縦士として働いているときの爽やかな彼とも違う、全くの別人だ。
突然現れた見たことのない彼に動揺して、目はキョロキョロと落ち着きなく視線が泳ぐ。「えっと……あのぉ……」なんて言いながらその場を晴れようとして、しどろもどろになりながらなにもない場所でつまずきそうになってしまった。
「だ、大丈夫か?」
彼は私の姿を見て慌てたような声を出し、助けようと脚を一歩踏み出した。私は恥ずかしさを隠すようにサッと左手を伸ばすと、それを軽く制する。
「大丈夫、お構いなく。では失礼します」
なにごともなかったように背筋を伸ばす。とにかく今は、ここ場から離れるのが最優先だ。
そう言わんばかりに彼に会釈し、一目散に駆け出す。脇目もふらずに走り続けると、目の先にグランドスタッフの休憩所が見えた。ここまで来れば安心だと、脚の動きを緩める。すると次第に慌ただしかった気持ちも徐々に落ち着いてきて、ホッと息をついた。