おかえりが聞こえる病室
コンコン。

控えめなノック。

「失礼します。」

さっきと同じ優しい声。

莉奈だった。

「眠れそう?」

ママが苦笑いを浮かべる。

「それが全然……。」

「そうですか。」

莉奈は病室の照明を少しだけ落とした。

真っ暗ではない。

でも、まぶしすぎない明るさ。

「これくらいの方が眠りやすいかな。」

そう言って、ベッドサイドへ歩いてくる。

「お熱、もう一回測らせてもらうね。」

体温計を脇に挟みながら、莉奈は自然に話しかける。

「おうちでは、何時くらいに寝てたの?」

「……9じ。」

「そっか。」

「今日はもう1時だから、いつもより遅くなっちゃったね。」

亜美はこくりとうなずいた。

体温計が小さく鳴る。

38.4℃。

莉奈はカルテへ記録しながら、呼吸の様子にも目を向ける。

少し速い。

でも、救急外来で見た記録よりは落ち着いている。

「胸の音、聞くね。」

聴診器を手で少し温めてから、そっと胸に当てる。

「冷たくない?」

「……だいじょうぶ。」

「ありがとう。」

診察はあっという間に終わった。
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