おかえりが聞こえる病室
病室を出てドアを閉めると、莉奈は一度だけ深呼吸をした。

ナースステーションへ戻る途中、夜勤リーダーが声をかける。

「302号室、どうだった?」

莉奈はカルテを抱え直し、小さく笑う。

「まだすごく緊張しています。」

「そりゃそうだよね。」

「救急で来たばかりだもん。」

莉奈は頷いた。

そして、心の中でそっとつぶやく。

(今日は、安心して眠れますように。)

まだその願いは、患者さんには届かない。

でも、この夜から少しずつ。

302号室で、一人の看護師と一人の小さな患者の物語が動き始めていた。
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