Ironic Honey
 羽聖をぶら下げられたおもちゃで遊べるようにその真下のマットに下ろす。羽聖はさっそく嬉しそうに、上にあるおもちゃを必死につかもうと手を動かしていた。

 この頃、目が完全に見えているのかはわからないが、何か動く物体を懸命につかみ取ろうとする様子は見える。

 千織は少し意地悪をするように、おもちゃを激しくぶらんぶらんと動かし、羽聖もそれを必死に目で追っているようには見える。


「すごいな」


 千織は少し笑って、優しく羽聖の頭を撫でた。

 この人をよく知る前はこの人が子供を育てられる? そもそも可愛がれるのかしら? なんて不安を感じていた。だって彼は、あまりに真面目で無表情で、冗談も通じなさそうで、仕事人間だってそんな印象を抱いていた。

 だから、この人を知っていって、実はすごく愛情深い人だとか、人への気遣いを忘れない人だとか、実はよく笑うとか、人の話をしっかり聞いて柔軟に受け止める人だとか、実はものすごく子供が好きで、サプライズが好きだとか。

 そんな彼の温かい人柄にたくさん触れた。


「羽聖は千織に似てほしいな」

「俺に? どうして?」


 千織は意外そうにそう問いかける。


「私みたいに意地っ張りで、面倒な女に育ったら可哀想よ」

「でも、君みたいに、頑張り屋で、笑顔が可愛くて、愛情深くて…、そんな人に育ってほしいな」


 私は軽く目を見開いた。だって、彼は自覚がないみたいだ。それが全部自分に当てはまっていること。
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