Ironic Honey
 笑って羽聖を千織の背中から降ろすと、彼はようやく羽聖の顔を見て、にっこりと彼の方が笑みを浮かべている。


「ようやく顔が見えた。可愛い。天使だな」

「そうね」


 私がしみじみと返答をすると、少し間が空いた後、千織が「実は…」と話し始め、そちらに顔を向ける。千織は変わらず、羽聖に視線を落としたままだ。


「百日記念の写真撮影あるだろ? お食い初めとか。その時の、ドレスのようなものを無理言ってうちで作っていて」

「…え!?」


 そんな話を聞いていなかったから当然驚いた。千織は少し笑うとソファの上に置いてあった箱を取ってきた。


「君が気に入らなきゃただのオーダーメイドドレスでいいと思っていたし…。でも、少しは驚かせたくて出来上がるまで黙ってた」


 スーツテーラーの社長はは赤ちゃん用ドレスまで作ってしまうらしい。行動力が恐ろしい。

 私は唖然としていると、千織は箱から丁寧に服を取り出す。服と一緒に入っていたカードには«To our sweet child《私達の可愛い子供》, Umi《羽聖》»と書かれている。

 千織からの心のこもった贈り物。きっと羽聖にとって一生ものになる。

 中からは淡いピンクの可愛らしいドレスが出てきた。サイズ感もぴったりで、素材にもこだわっているのか肌触りに優しい。


「赤ちゃん用の素材を選ぶのも大変だよな。妥協はしたくなくて、ずっと悩んでた」

「千織、ありがとう。私にとってもうれしいサプライズだわ」


 そう伝えると、千織は少し微笑み、「よかった」と安堵したようにこぼした。
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