Ironic Honey
Episode12
 羽聖は一歳になった。自分ですでに家の中を歩き回っており、今は千織の足に巻き付いてくっついて過ごしており、千織はタブレットで資料を見ながら羽聖の頭を撫でている。

 羽聖はこの時期にはよく寝るようになり、私も随分体は楽になったような気はしたが、歩き回るようになってから動きが活発になってきたので、中々こっちはこっちでしんどい。


「聖菜」


 洗い物をしていると突然千織に名前を呼ばれ、そちらに顔を向ける。


「何?」

「明日、羽聖をうちの親に預けて、昼に少し出かけないか?」


 千織の提案に「ん~」と声を漏らした。嫌なわけではないけれど、まだ羽聖は人の家だと泣いてしまう。それが祖父母の家であれ、だ。

 かなりの負担をかけてしまうのではないかと、少し心配になった。


「本当に大丈夫? 私達がいても泣くのに」

「実は…、少し話したいことがあって」

「話したい事?」


 千織から改まって話したい事というのは珍しかった。羽聖が寝静まった夜に、これからのことについて話すことは何度もあった。

 羽聖の顔を見ると、親指を咥えて千織の方を見上げていた。まだ話はしないけれど、人の顔を見て「あー、あー」と声を出すことが増え、何かを伝えようとする意志が出てきた。

 そんな娘の成長を微笑ましく思う。
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