Ironic Honey
「…お義父さんとお義母さんがいいなら。二人きりじゃないとだめなのよね…?」

「連れていきたい場所もあるから、二時間くらい出かけよう」


 そう言って千織はタブレットをソファに置くと、羽聖を膝上に抱き寄せた。頭に軽くキスをして、羽聖を膝の上で揺らすと、羽聖は楽しそうに笑っている。

 最近ゲラゲラと笑うことが増え、とっても愛らしい。千織もそんな羽聖の笑顔を見て、慈しむ様な目で見ている。

 その顔が好きだ。人を愛しているときの彼の表情が好き。

 誰よりも優しい表情をしていて、目を細める瞬間も、口角が薄く上がるのも、ふと柔らかくなるその雰囲気も、何もかもが好き。

 じっと千織を見ていると、彼はこちらに顔を上げる。


「どうかした?」

「…ううん。好きだなと思っただけ」


 私が少し微笑み、そうこぼすと彼は少し目を見開いて、羽聖を下ろすと近付いてきて、後ろから思い切り抱きしめてくる。


「わ! ちょっと何!?」


 笑いながら濡れた手で千織の手を軽く叩くと、さらに強く抱きしめられた。


「君が素直に好きとか言うの珍しいから、年甲斐もなくときめいた」


 千織の言葉に笑っていると彼は私の肩に額を押し付けている。

 結婚して二年くらい経過しているのに、まだお互いにときめけるらしい。
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