Ironic Honey
 正直私は、あの一夜を何度も後悔したことがあった。羽聖が生まれるまで不安で、こんなのうまくいきっこないと決めつけて、千織と話し合うたびにこの人となら、と思っては、交際期間がないことを気にして不安になって、こんなたくさんの不安を抱えるくらいならば、あの一夜を過ごさなければよかったと。

 これは完全に私の弱さのせい。今は何も後悔はしていない。

 千織のことはすごく好き…、いや、愛しているし、羽聖のことは大変だけど、ものすごく愛おしい。今が間違いなく、私の人生最大の幸せだとすら思う。

 あの日の千織を思い出すと笑いがこみあげてきた。


「何笑ってる?」

「笑えるわよ。愛のない結婚をした私達が、今こうして上手く夫婦として過ごせているんだもん。あの日の千織の真顔でのプロポーズは一生忘れない」


 私が笑うと、千織も少し笑った。


「確かにおかしな状況だったかもしれない」

「でしょ? こんな風に一緒になってうまくいっている夫婦なんて一握りしかいなくない?」


 そう問いかけると、千織は店員が運んできたコーヒーを受け取りながら、「ただ…」と言葉を続けた。
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