Ironic Honey
「そもそも俺は女性をそんなに好きではなかったから」

「まあ、それはそう見える。ナンパされてたあの日、あれほど嫌な顔をしていたら」

「それも別に無視し続けていればよかった。それでも、隣に座っていた君の肩を抱いて、自分の恋人だと嘘を吐いたのは、直感的に君ならいいと思ったから」


 あの行動にそんな意味が込められているとは思っていなかった。だって、ただの女除けとして、唯一ナンパもせずに見ていたから、利用されただけだと思っていたし、千織が私をその時から気になってくれていたなんて思いもしなかった。

 千織は私の顔を見て少し微笑むと、珈琲に軽く口づける。それからそっとコースターの上に置いて、自分の膝の上で手を組んだ。


「一人でバーで酒を飲む君が魅惑的で、見惚れた瞬間が何度もあった。それなのに、目があった時、君は無自覚かもしれないけれど、俺に向かって微笑んだから、小悪魔だなと思ってみていた」


 そんなこと、全く覚えていない。確かにそれなりに男性の目を引き付ける術だけは身に着けていたかもしれない。それなりに遊んでいたし。

 だけど、あの日の私は彼がタイプで、彼のひとつひとつの動作に目をやって、私も眺めるだけならタダだと思いながら、惹かれていただけだから。
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