Ironic Honey
Epilogue
 今、私達はドラマなどでよく見る、あのシーンを、前にしている。

 前に牧師が立っていて、隣には千織がいる。私の顔の前には純白のベールが下りていて、ドレスはずっしり重い。

 そんなことも耐え、牧師の言葉を待っている。


「新郎 千織さん、あなたはここにいる聖菜さんを病める時も、健やかなる時も、富める時も、貧しき時も、これを愛し、これを敬い、これを慰め、これを助け、その命のある限り、真心を尽くすことを誓いますか?」


 その言葉を問いかけられた時、千織は私の顔を見た。

 それから少し微笑むと、また前を向き「誓います」と確かな声で放った。そういう流れなのもあるだろうけれど、彼のはっきりとした言い方に、彼の意思を感じる。

 牧師も微笑むと、今度視線は私の方へ。


「新婦 聖菜さん、あなたはここにいる千織さんを病める時も、健やかなる時も、富める時も、貧しき時も、これを愛し、これを敬い、これを慰め、これを助け、その命のある限り、真心を尽くすことを誓いますか?」


 その問いかけに、私も同じように千織の方を見る。彼も同じようにこちらを見るのを確認し、私は牧師ではなく、彼を見て「誓います」といった。私が誓う相手は神にじゃない。彼に誓いたいから。

 彼は軽く目を見開くと、その後ほんの少し微笑んで前を見る。
< 128 / 132 >

この作品をシェア

pagetop