Ironic Honey
「それでは、指輪の交換を」


 スタッフが私達の結婚指輪を持ってくる。台座に乗り、光に照らされたハンドメイドの結婚指輪。ハンドメイドならではか、ジュエリーショップで見るようなものとは違う、少し淡くて柔らかい光を反射させている。

 彼は台座に乗る指輪のうち一つを手に取ると、私の左手を優しくつかみ、薬指にそっと滑らせた。

 それを見守ると、私も自分の指輪より大きなサイズのものをそっとつかみ、千織の左手の薬指にそっと滑らせていく。ほんの少し、関節に辺りはしたものの、問題なく奥まではまっている。

 千織の手をそっと離すと、牧師はそのタイミングで「続いて、誓いのキスを」と続けた。辺りは誰もいないのかと感じるほど静寂で、ゲストや家族は私達の姿に注目をしている。

 私はベールをめくりやすいように軽く頭を下げ、千織はそっと持ち上げ後ろに回した。それに合わせ、ゆっくりと顔を上げると、千織の目とぶつかる。

 彼はまっすぐ私を捉えていて、そっと肩を優しくつかむと、少しずつ近づいてくる。それを見て私は目を瞑ると、千織は顔の角度を変え、そっと私の唇に重ね合わせた。

 周りの拍手の音が遠く感じる。もう何度も唇は重ね合わせているはずなのに、毎度ドキドキと鼓動がうるさく鳴り、それしか聞こえなくなるから。

 しばらくの間、私達はお互いにキスを交わし、離れると千織と至近距離で目が合う。きっと顔が火照った私に彼は笑い、両手で私の頬を挟むと、額を軽く合わせる。

 私も同じように笑い、彼との幸せな日を共に祝福しあっていた。
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