Ironic Honey
 ようやくホテルの部屋に到着すると、私と千織はベッドに沈み込んだ。私達は二次会の対応があり、羽聖はうちの母と共に寝てくれた。

 長い一日でかなり疲労はあったけれど、人生で一番幸せな日だったと思う。


「長い一日だったな」

「本当にね。お疲れ様」


 二人共うつ伏せで寝転がって、お互いの顔の方向を見ている。それから少しの間見つめあっていた。お互い眠そうな表情をしていて、千織の瞼は今にでも落ちてしまいそうだった。

 私が千織の手にそっと触れると、そこで目を開ける千織。


「…風呂入らないとな」

「明日でもいいんじゃない?」

「いや、だめだろ」

「どうして? 風呂キャンは嫌か」


 今はやりの風呂キャンなんて言葉を使うと千織はクスクスと笑っている。


「まあ基本的に嫌だけど、今日は特別だから」

「特別?」

「羽聖がいない。結婚式が終わった初夜。こんな絶好の機会ないだろ?」


 彼の言葉に意味を理解し、頬を赤く染めた。疲弊していて全く何も考えていなかったけれど、確かにそういうことをするには特別な夜だとは思う。
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