Ironic Honey
 千織はほんの少し笑みをこぼし微笑むと「…二人目、欲しいな。そろそろ」とそんなことを漏らした。

 二人目。考えていなかったわけではないけれど、何となく羽聖を育てることに必死で、後回しにしてしまっていた話題だった。

 千織の目を見ていると、私の頬を優しく撫でる。そっと壊れ物を扱うように。


「…今度産むときは、無痛にしてもいい?」

「ふふ、全然いいけど。その答えは前向きってことか?」

「かなりね。羽聖の時、後悔したの。体力切れで意識失って、カンガルーケアもできなかったこと。せめて生まれたその瞬間に抱いてあげるだけの体力はのこしてあげたい」


 千織は私の言葉に頷き、ほんの少し近寄ると私の頬にキスをした。私がそれに驚いて、千織を見ていると、彼は頬や目元、耳に口づける。

 それがほんの少しくすぐったくて、笑いながら彼の胸元を軽く押して抵抗するけれど、その手すらも絡めとられる。


「…お風呂は?」

「行くよ。一緒に行く?」

「…明るいところで見られるのはちょっと」

「じゃあ浴室暗くする?」

「危ないでしょ。馬鹿」


 そう言って笑うと、千織も少し笑い、ほんの少しスイッチが入ったように、唇を重ね合わせ、徐々に深くなる。キスを交わしながら、私の体は仰向けにされ、手を変わらず強く握りながら、優しく何度か甘いキスを繰り返した。

 それから離して見つめあうと、千織は額を合わせ、「愛してるよ」と甘く囁いた。私もそれに応える様に彼を見上げ「愛してるよ」と同じように返す。

 普段は言えない言葉を伝えると、彼は少し目を見開き、それから微笑んだ。

 これからはもっと素直になるから。あなたがくれる大きな愛にはまだ負けるかもしれないけれど、何回でも、何十回でも、何百回でも、何千回でも、愛してるを伝える。

 だから、ずっとそばにいて。いつまでも。
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