Ironic Honey
「…あなた、何歳なの?」

「俺? 俺は三十二」

「へぇ、見えない」

「どっちの意味で?」

「大人のフリした子供よ」

「初めていわれた」


 私の悪態に楽しそうに笑っている。

 私はまた照れ隠しをしていて、素直じゃない言葉をいくつも吐く。

 その笑顔が私の素直じゃないところを、見透かしているようなきがして、やりにくい。


「君は? って、聞くのはデリカシーに欠けるか」

「別に構わないわよ。三十歳」

「二つ下か。年上は好き?」

「普通」

「普通、了解。好きになってもらうようにしないとな」


 なんなの、この人。本当にやりにくい。

 もうこの人のペースに飲み込まれたくなくて、私は窓の外を眺めていた。

 普段は余裕があるはずなのに、この人の傍にいると、掌の上に載せられている気分。時々指先で突くように遊ばれている。

 溜息を吐くと、また千織はクスッと笑みを零し、運転を続けていた。
< 21 / 132 >

この作品をシェア

pagetop