Ironic Honey
 結構な時間、待たされた後、ようやく診察室へ呼ばれた。

 中に入ると女性の医師で、それだけでもなんだか安心した。男性が嫌、なわけではないが、今はデリケートゾーンや、腹部を見られることにまだ抵抗があるため、女性の方がいい。


「こんにちは。どうぞ、おかけください」


 千織と二人で腰掛けると、医師は優しく笑みを浮かべる。


「初めまして。本日から天野さんの担当をいたします。志筑《しづき》と申します。よろしくお願いいたします」

「よろしくお願いします」

「早速ですが、妊娠されてますね。現在9週目です」

「あ…、そう、ですか」


 当然ドラマの様な、溜めなどを考えてはいなかったが、あまりにもあっさり告げられ、実感がわかなかった。妊娠検査薬を見た時もそう。妊娠しているんだな、と理解はしても、いまいち実感がわかない。

 千織はそれを黙って聞いていて、彼の方を見ると軽く首を傾げていた。


「すみません。言葉で淡々と言われても実感がわきませんよね。エコー、見てみましょうか。横になってもらえますか?」


 診察室内のベッドに横になると、服を軽くまくり、スカートと下着もほんの少し下げられる。千織の前、素肌を出すことに、羞恥心があり、顔が熱くなる。

 千織はそれを気にすることもなく見ており、耳まで熱を持つ。


「あ、あのさ」

「ん?」

「あんまり、見ないでくれない? さすがに恥ずかしいし」

「何で? 綺麗なのに」

「揶揄ってるでしょ!」


 そう怒る私にクスクスと笑っており、志筑先生もほんの少し笑っていたように感じた。

 千織はしゃがみ込み、寝ころぶ私の頭を撫でる。その手つきが優しい。

 この人、人前でこういうことすることに抵抗ないのかしら?

 そんな風に思いながら、モニターを見る。
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