Ironic Honey
 お腹にジェルの様なものを出され、それを志筑先生が広げ、塗っていく。以外にも温かいけれど、少し気持ち悪い。そこまで準備が終わるとローラーが付いた機器を私のお腹の上に乗せ、滑らせていく。

 まだ何も映っていない。白い模様の様なものが見えるけれど、何を移しているのかわからない。

 千織を見ると、彼もモニターに視線が釘付けになっていた。その顔が真剣で、でも子供みたいに夢中になって見ていて、可愛らしい所もある。

 その姿を見てから、モニターを見ると、小さく丸いものが写った。


「…ここにいますね。見えますか?」

「…はい」

「心臓の音も聞いてみますか」

「え、聞けるんですか?」

「はい。もう聞こえますよ」


 先生は少し笑うと、何かのスイッチを入れる。その瞬間、どくん、どくんという音が、診察内に響き渡る。

 こんなに小さいのに、一生懸命生きている。その事実に目尻が熱くなり、思わず涙が零れた。千織はその姿を見ると、優しく目元を拭ってくれる。

 ずっと不安ばかり。この子の母親に中途半端になると思っただけなら、生まれさせない方が、ってそんな暗いことを一瞬だけでも考えたことは、ある。

 だけど、姿を見て、音を聞いて、その瞬間、早く会いたいと思った。

 愛し合った相手と出来た子ではなくとも、私はこの子を愛おしいと思う。


「…早く、会いたい」

「…そうだな」


 千織の声が、いつもより柔らかい。

 彼も少しは、この子に対して愛情を持ってくれていたらいいのに。
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