Ironic Honey
 病院から出ると、市役所に手続き等を行いに行った。マタニティキーホルダーを浮かれて鞄に着けてみたりして。まさか自分が着けることになるとは思わなかった。

 そのまま自分の家へまっすぐ送り届けられ、マンションの入口で向かい合う。


「体調は悪くないか?」

「平気」

「そうか。何かあったら連絡してくれ。無くても連絡してくれてもいいけど」

「……わかった」


 まさかこんな風に気遣ってくれるなんて意外だった。淡々とやることを済ませたらドライに見える。それはきっとあの日の朝のせい。

 翌朝起きた時には、気まずそうな雰囲気も一切見せずに、義務的に会話をしたあの印象が強かったから。

 彼は私の反応に少し微笑むと、軽く頭を撫でてくる。

 これも予想外。こんな風に優しく接してくる人だったか。


「それと、週一は会おう。少なくとも」

「…週一って少ないの?」

「少ないだろ。今君は身重なのに、何かあったら心配だし、定期的に顔は見ておきたい」

「……そう」

「身体冷やすなよ。大事にして」


 再三気を遣われ思わず「わかったわよ」と返事をしながら笑ってしまう。彼も私の笑顔に釣られ笑うと、「また連絡する」と額に口付け、車に戻って行った。

 予想外の行動に顔が火照る。まさかこんな甘い行動するなんて予想外だった。

 私は車内から手を振る彼の姿を確認し、車を見送る。

 あれほど淡々としていたかと思えば、優しく、気遣いが出来て、甘い。よく分からなくて、変な人。
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