Ironic Honey
「なんだ、その顔」

「……意外。きちんと話し合いもしてくれるんだ」

「君の中の俺がどんなイメージかはわからないけど、夫婦になるんだから寄り添う」


 淡々と夫婦になる事を決めて、愛なんてないから形だけ、なんて思ったりもしたけれど、彼は突然決まった結婚にも向き合おうとしてくれている。

 どちらかと言えば、距離を置こうとしていたのは私の方だったのかもしれない。

 千織の言葉に少し微笑み、「そっか」と言葉を零した。

 意外とどれほど甘えても、我儘を言ってもの彼なら聞いてくれるのかもしれない。きちんと家族としての形も、きっと作り出せる。


「あなたって、変な人よね。勢いで結婚決めるし、勢いで同棲なんて言い出す」

「勢いじゃない。責任の取り方を、この一ヶ月は俺も考えた」

「一ヶ月?」

「君から連絡が来るまで。もしかしたら、本当に出来ていたら、ってことを考えて、俺に何が出来るかって。当然結婚せずに、金銭的援助も思い付いたけど、そっちの方が無責任な気がして…」


 私が大丈夫だと構えていた間も、この人は考えていてくれてたんだ。全然、簡単に決めた答えなんかじゃなかった。


「…ありがとう、千織」

「礼なんか言う必要ない。むしろ、こんな思いをさせて申し訳ない」

「…たしかに、流れは良くなかったかもしれないけど、悪いことじゃない」


 そんな私の言葉に少しだけ目を見開くと、そのあと微笑み、車の運転に集中していた。

 きっと、上手く家族になれる。きっと。
< 29 / 132 >

この作品をシェア

pagetop