Ironic Honey
Episode4
「え? 挨拶?」


 それから約束通り毎週会い、妊娠は十五週目に突入していた。もうすぐ安定期に入るため、引っ越し準備も少しずつ進めている。

 千織は運転をしながら、こちらを見ずに「そうだ」と答えた。

 確かに、子供も生まれる、結婚もするとなると、挨拶はしなければならない。私は、自分の親のことを忘れていたわけではないが、父の反応が怖くて、まだ報告が出来ていなかった。

 父は授かり婚というのには、反対派の人間だ。以前テレビを見ながら「結婚もせず、共に暮らしてもいないのに、何の責任が取れる。そこからうまくいくなんて本当に一部だろう」と、とんでもない偏見で語っていたのを思い出した。

 私は、授かった命が繋いでくれる縁もあると思う。それが幸せなことだって。きっとこう反論をしても、父は「考えが甘い」ときっと私をしかりつける。悪く言えば、頭の固い父。よく言えば、慎重派。

 挨拶と聞くだけで気が重い。


「何か困ることはある?」

「いや、困ることはないけど、気が重いだけ。うちの父は、少しだけ難しい人だから」

「大丈夫。今からいい反応をされると思ってない。うちは…、多分喜ぶと思う」

「喜ぶ?」

「孫の顔が見られる~! って」

「明るい家族ね」


 そう返すと千織は少し笑い「だろ」と零していた。
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