Ironic Honey
 翌日、千織の実家は豪邸だった。駐車場だけでもかなりの広さがあり、白を基調とした家はどこか海外の家みたいだった。太陽に反射した光は眩しく、うっすら目を細める。

 千織は慣れたように駐車場に車を駐車させると、エンジンを止めた。

 私も静かに車を降りると、千織は私の方まで近寄り、手を差し伸べた。少し驚いたけれど、その手を掴み、ゆっくり歩きだすと、千織も私に歩幅を合わせながらゆっくりと歩いてくれる。

 長い足で一歩を踏み出すとかなり大きな歩幅になるのだけど、決して私を置いていこうとしない。


「こうやって他の女性とも何回も歩いたの?」

「…どういう質問なんだ、それ」

「人に歩幅を合わせるのが上手だから」


 そう話しながら扉の前まで来ると、千織は先ほどまでの困惑した表情を、いつもの表情へ戻していった。


「その人を思うから出る行動であって、誰にでもできる行動だったら意味がないだろ」


 そういうと私の反応を待たずにドアを開ける。

 私は唖然として、ほんの少しの間、千織の背中を見ていた。

 その人を思うから…、って言葉が、暗に私を指していることはわかる。その遠回りな伝え方が、こっちも照れくさい。

 深呼吸してから千織の後ろを追いかけ、中に足を踏み入れる。
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