Ironic Honey
「俺は、一緒に寝るようになるなら、抱き合いながら寝たい」


 そういうと手の甲を優しく撫でてくる。誘惑するようにゆっくり、優しく。その撫で方にぞくりと快感が走り、千織を見ると、彼は微笑んでいる。

 もうこんな空気感に持ち込まれては、断れるわけがない。私はうなずき「うん」と、静かに答えると千織は「おいで」と、優しく低い声でそう言う。

 手を引くと優しくベッドに座らせ、上布団をめくる。それに合わせ、ゆっくり体を倒すと、彼もその隣に入ると、私を優しく抱き寄せ、腕枕をすると頭を優しく撫でてくれていた。

 最初はドキドキと鼓動がうるさく鳴って、全く落ち着かなかなかったのに、優しい手つきに少しずつリラックスするようになった。


「眠れそう?」

「…うん。悪くない」

「よかった。たくさん眠って」


 静かな優しい声で、そう促した後も、頭を撫でる手は止めず、ずっと続けてくれていた。

 こんな風に、人の温度を感じてゆっくり過ごすのはあまりなかったかもしれない。こんなに安心するのはこの人だからなのか、ただ体温に溶かされてなのか…。

 そんなことをぼんやりと考えながら、眠りに深く、ふかく落ちていった。


「おやすみ」


 彼がそう囁いて、額に口づけていたことを私は知らない。
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