Ironic Honey
「籍入れる時に間に合わせたくて、俺が選んできたけど、何か他に気に入ったデザインがあればそっちにしよう」

「…ううん。これがいい」


 千織がくれた指輪を眺める。派手に主張するようなデザインじゃない。指のラインにそっと寄り添うような優しいウェーブ。すぐに馴染んで違和感がない。

 ライトアップされた光に当たると、中央の石に向かって小さな光の粒がまたたきながら流れていく。その上品で、綺麗な輝きに、私はしばらく言葉を失って眺めていた。


「…綺麗ね」

「君のが綺麗」

「はは、何それ。どんな冗談?」

「冗談じゃない」


 そういって腰に手を伸ばし、そっと抱き寄せると、そっと触れるだけの口づけをした。

 彼の目は穏やかで、いつくしむような。その瞬間、聞きたかったことなんてどうでもいいかと思えた。


「千織」

「ん?」

「好きよ」


 私が伝えられる精一杯の言葉。愛してる、というにはまだ照れくさいから。今は、私の気持ちの十分の一にも満たないけれど、伝えようと思う。


「…苦しいな」

「……え?」


 彼の思わぬ言葉に唖然とする。苦しいなんて言われると思って伝えていない。
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