Ironic Honey
 着いた先はリバーウォークだった。きれいに川はライトアップされていて、ところどころベンチがあって、そのベンチの一つ一つにカップルが座っている。私達はその通りをゆっくり歩いていた。

 風が吹いている。ほんの少し冷えていて、身を震わせると、千織はスーツのジャケットを脱ぎ、肩にかけてくれた。


「ありがとう」

「冷やすとよくない。何か温かい飲み物でも買うか?」

「いいわよ。そんな長居はしないでしょ?」

「まあ」


 歩きながらそういうも、なかなかここに来た理由を話そうとはしない。私だって聞きたいことがあったはずなのに出てこない。

 愛してるって、本当? あの場を誤魔化すために出てきた言葉だった? 今までのことは義務じゃないの?

 それも聞きたいことだけど、それ以上に私も伝えたいことがあった。


「あのさ」


 そう話しだそうとした時に千織は私の手を掴んで、そっと左手の薬指に何かをはめてきた。

 予想外の行動に目を見開いていると、千織は私の手を掴み眺めている。


「な、んなの? これは」

「きちんとプロポーズしていなかったなと思って」


 確かに、あの日子供ができたと話してから流れるように結婚の話が出た。プロポーズらしいプロポーズはなかったけれど、それでも仕方がないと思ってた。だって、お互いが愛し合ってそんな状況になったわけではないから。

 何もそれに文句なんてあるはずもなかったのに、千織は考えてくれていた。
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