Ironic Honey
 車に乗り込んだけど、どこか気まずい雰囲気が漂っている。私が意識しすぎているせいなのかもしれないけれど、妊娠がわかってからそういうことは愚か、親密な触れ合いもない。

 手をつないだりなど、その程度はあるけれど、恋人が愛を深め合うようなそんな時間を過ごしたことはない。

 何だかこのまま帰宅するとこのまま雰囲気を引きずりそうな気がして「あ、のさ…!」と声をかける。


「ん?」

「か、買い物行かない? 服がきつくなってきたから、マタニティウェア買いたい。パジャマとか、服とか」


 私の発言に千織は「わかった」と言ってそのまま車を走らせる。

 そういうことになって、嫌なわけではない。だけど、今更どんな顔をして彼と向き合えばいい? どんな顔をして愛し、愛されればいいのかわからない。

 きっといつも通り照れているだけだとは思う。だって、あの日が最初で最後だと思ってたんだから、仕方ないでしょ。まさか夫婦になって、家族になるだなんて思っていなかった。


「…聖菜」

「ん?」

「あまり気にするな」


 そう言って笑う千織に苦笑いして、「うん」とうなずいた。

 私は隠し事ができない。案の定ばれてしまっていた。
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