Ironic Honey
 荷解きを再開すると、千織はその様子を後ろから見ながら、私の腰を支えてくれている。


「何か手伝えることはある?」

「いや、荷物は結構運び込んでたからそんなに多くないし、大丈夫」

「じゃあ、こうしてくっついてるのは邪魔?」


 そう問いかけてくる大男に思わず私は笑ってしまう。出会った当初のイメージは堅物なのに、最近の彼のイメージは甘えん坊だ。意外にくっつくのが好きで、それでいて相変わらず真面目。

 そしてそんな私も彼に甘えられるのも嫌いじゃない。それに、彼もこんな完璧ではない私を甘やかしてくれるから。


「…本当に無痛にしなくていいのか? 普通分娩を選ぶって言っていたけど」


 千織はくっつきながら突然そんな話をしてくる。もうすぐあと二か月ほど臨月に入るため、選択に迫られている。だけど私は、普通分娩を選んだ。

 出産の痛みは当然怖い。何度も無痛分娩を悩んだけれど、お産の進行がゆっくりになり、その結果、子宮収縮剤の使用や、吸引分娩、鉗子分娩などの医療介入が必要になる確率が自然分娩よりやや高くなるとか、麻酔が効かない可能性があるかもしれないとか、それに対して医療費が高くなることに不満はないけれど、少しでもその分、子供に回せるんじゃないかとか。

 痛みに強くない人、体力を温存したい人は、無痛分娩でもいいと思う。だけど私は、痛みにもそれなりに耐えられて、体力にもまだ自信がある。だから、普通分娩でいいのではないかと思った。

 
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