Ironic Honey
 夕飯が出来上がる頃、ドアが開く音がする。千織の帰宅の合図を聞くと、すぐに玄関先に出迎えに行く。


「お帰り」


 そう声をかけると、千織は少し感動したような表情をしていて、家の中に足を踏み入れると、そのまま私の元に来ては抱き着いてきた。

 突然のことに驚くも、千織の背中に腕を回した。それからトントンと軽く叩き「どうしたの?」と問いかける。


「いつも仕事から帰ってくるのは君の方が遅いから、こうして出迎えられる日が来るなんて感動する」


 そう聞こえてきた声に少し微笑み、「うん」とだけ返した。私も彼の帰りをこんな風に待って、無事に帰ってきた彼をお帰りと出迎えられるなら、こんな幸せなことはない。

 家族なら普段当たり前にしていること。きっと私達もこれが当たり前になっていく。だから今はこの幸せを噛みしめたい。


「ほら、着替えてきて。ご飯食べよ」

「ああ」


 素直に返事をする千織に少し笑い、キッチンに戻る。

 彼も私と同じように幸せだと感じていてくれていたらいいのに。
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