ねえ、はやく降参してよ。 ――同じ苗字になっても、まだ足りない。甘くて焦れったい心理戦を続ける夫婦。

「…………っ……」

 堪えきれなくなった涙が、みるみる流れ出した。
 湿っていくシーツの上で、何度も鼻を啜る。
 キャミソールから出ている腕は、ひどく冷え切っていた。

 ハルとは『夫婦』として、たしかな絆で結ばれている。
 少しの間、離れた場所で暮らすことくらい、乗り越えられると思った。

 だって、会えなくても変わらぬ愛を抱き続ける父の姿を、いつも側で見ていたから――。

 でも、甘かったのだ。

 共に暮らし、同じ空気を吸い、互いの存在を求め合った日々の積み重ねは、確実に私を作り変えていた。
 ハルはもう、夫や恋人という枠を超え、私という人間を構成する一部になってしまっていたのだ。

 それをもがれた痛みが、遅効性の毒のように、私の全身を苛んでいた。
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