ねえ、はやく降参してよ。 ――同じ苗字になっても、まだ足りない。甘くて焦れったい心理戦を続ける夫婦。【連載中】
 ◇

「……美味しいっ」

 熱で少し赤らんだ頬を緩ませ、マナがスプーンを口に運ぶ。
 細かく刻んだ根菜と卵を落とした、消化の良いおかゆだ。

 その姿を眺めながら、先ほど買ってきたばかりの茶葉の封を切る。

 熱湯を入れて温めておいた二つのマグカップを空にして、ガラスのティーポットには茶葉を落とす。
 適温に冷ましたお湯を静かに注ぐと、小さく丸まっていた葉がゆっくりと解け、柔らかな黄金色とともに茉莉花の甘い香りが広がった。

 食後の薬と水の入ったグラスも添えて、テーブルに置く。
 コトッ、と陶器の鳴る音に気づき、マナが顔を上げた。

「あ。買ってきてくれたの?」

「そう。切らしてただろ」

 ポットを傾け、お茶を注ぎ入れながら答えた。

 俺も向かいの席に腰を下ろし、自分のおかゆに手をつける。

「ありがと。なんかハル、優しい」

 湯気越しに、弱々しくはにかむ顔が見えた。

「別に。いつもだろ?」

 そう返すと、カップを両手で包み込みながら小さく笑った。

「お茶はよく買ってきてくれるけどさ。基本は、意地悪ばっかりじゃん」

 一口啜ったマナは、ふう、と心地よさそうな白い息を漏らした。

「……今日、ごめんね?」

 そして、上目遣いでこちらをうかがってくる。

「何が?」

「火曜日なのに、『できなくて』」

 病人のくせに、余裕ぶったからかいの響きが含まれている。
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