君に届け
プロローグ
「ん……ぅるせ……」
枕元で鳴り響くアラームを、手を伸ばしてカチッと止める。
「ふぁぁあ……」
大きなあくびをしながらベッドから起き上がると、階下からお母さんの優しい声が響いた。
「希子ー! 朝ごはんできてるよー!」
「はぁーい!」
眠い目をこすりながら階段を降りていく。
相原 希子、13歳。
中学1年生。今は3月だから…来月からはもう2年生だ。
身長は156センチ。体重は……おっと危ない、これ以上は乙女の秘密ということで控えておこう。
「ごちそうさまでした!」
お皿を片付けながら、時計を見る。
「もう準備終わったの?」
「あったりまえよ! もうちょっとで家出るね」
上着を羽織ったお父さんが、私たちの方を振り返った。
「お父さんはもう出るぞ」
「早いねぇ。行ってらっしゃい!」
「行ってらっしゃい、気をつけてね」
「いってきまーす」
バタン、とドアが閉まる音が響く。
~15分後~
「そろそろ私も出なくちゃ!」
教科書の詰まった重いカバンを肩にかけ、スニーカーに足を滑り込ませる。
「いってきまーす!」
「行ってらっしゃい! 気を付けてね!」
玄関のドアを開けた瞬間、凍てつくような冷気が暴力のように一気に押し寄せてきた。
あまりの極寒に、全身の毛穴がキュッと縮み、思わず首をすくめる。
「うぅ、さむ……! おかーさーん! マフラーちょーだい!」
「ちょっと待っててねー!」
パタパタと廊下を走る音がして、お母さんがお気に入りのマフラーを持ってきてくれた。
「はい! 暖かくしていくのよ」
「ありがと! お母さんも暖かくしてね。いってきます!」
お母さんは、いつもの穏やかな笑みを浮かべて、手を振っていた。
――これが、家族で交わした最後の会話になるなんて、この時の私は知る由もなかった。
「優子、おはよー!」
「おっ、希子おはよ!」
教室に入るなり、長谷川 優子が満面の笑みで手を振ってくれた。
優子は、保育園のときからの幼なじみであり、何でも話せる私の大親友だ。
優子といつも通り朝の挨拶を交わし、くだらないおしゃべりをする。ふと視線をやると、そこには大好きな神原翔吾くんの姿。(今日もかっこいいなぁ……)なんて、胸をときめかせながら遠くから眺めていた。
その後は授業を受けて、いつもの他愛ない、いつも通りの金曜日だった。
私たちが「あたりまえ」だと信じて疑わなかった世界が、あと数分で全て奪われるなんて、誰も知らずに。
時計の針は、午後2時45分を回ろうとしていた。
枕元で鳴り響くアラームを、手を伸ばしてカチッと止める。
「ふぁぁあ……」
大きなあくびをしながらベッドから起き上がると、階下からお母さんの優しい声が響いた。
「希子ー! 朝ごはんできてるよー!」
「はぁーい!」
眠い目をこすりながら階段を降りていく。
相原 希子、13歳。
中学1年生。今は3月だから…来月からはもう2年生だ。
身長は156センチ。体重は……おっと危ない、これ以上は乙女の秘密ということで控えておこう。
「ごちそうさまでした!」
お皿を片付けながら、時計を見る。
「もう準備終わったの?」
「あったりまえよ! もうちょっとで家出るね」
上着を羽織ったお父さんが、私たちの方を振り返った。
「お父さんはもう出るぞ」
「早いねぇ。行ってらっしゃい!」
「行ってらっしゃい、気をつけてね」
「いってきまーす」
バタン、とドアが閉まる音が響く。
~15分後~
「そろそろ私も出なくちゃ!」
教科書の詰まった重いカバンを肩にかけ、スニーカーに足を滑り込ませる。
「いってきまーす!」
「行ってらっしゃい! 気を付けてね!」
玄関のドアを開けた瞬間、凍てつくような冷気が暴力のように一気に押し寄せてきた。
あまりの極寒に、全身の毛穴がキュッと縮み、思わず首をすくめる。
「うぅ、さむ……! おかーさーん! マフラーちょーだい!」
「ちょっと待っててねー!」
パタパタと廊下を走る音がして、お母さんがお気に入りのマフラーを持ってきてくれた。
「はい! 暖かくしていくのよ」
「ありがと! お母さんも暖かくしてね。いってきます!」
お母さんは、いつもの穏やかな笑みを浮かべて、手を振っていた。
――これが、家族で交わした最後の会話になるなんて、この時の私は知る由もなかった。
「優子、おはよー!」
「おっ、希子おはよ!」
教室に入るなり、長谷川 優子が満面の笑みで手を振ってくれた。
優子は、保育園のときからの幼なじみであり、何でも話せる私の大親友だ。
優子といつも通り朝の挨拶を交わし、くだらないおしゃべりをする。ふと視線をやると、そこには大好きな神原翔吾くんの姿。(今日もかっこいいなぁ……)なんて、胸をときめかせながら遠くから眺めていた。
その後は授業を受けて、いつもの他愛ない、いつも通りの金曜日だった。
私たちが「あたりまえ」だと信じて疑わなかった世界が、あと数分で全て奪われるなんて、誰も知らずに。
時計の針は、午後2時45分を回ろうとしていた。