伯父の命により、高潔すぎて『聖人』と噂の男の元へ行く事になりました。
9.従兄妹
そこは静寂に包まれた大広間。
天井から吊るされた御簾たちが、風に揺られてはたはたと靡いている。
ここで祓氏たちが断じ合う場として使われているが今は辺りに人の気配はなく、薄暗さが淋しさを感じさせる。
そんな厳粛たるこの降龍館の、そんな一室で微かな二つの吐息が歪に響いていた。
『眞佳様ー!どちらにおられますかー!』
朦朧とする意識の中で、遠くの方から声が聞こえてくる。目の前の男の名を探す声だ。
「……眞佳、さまっ、呼ばれて──っ」
知らせようとした唇は強引に塞がれて声を遮られてしまう。そうして何度目かの熱い口付けにくらりと目眩を起こした。
梓娟は魔物退治から帰ったばかりの眞佳にここへと連れて来られた。
梓娟は眞佳が出かけていたから「おかえりなさい」と言葉を掛けただけ。そんな他意のない言葉のどこが良かったのか。急に気分を良くした眞佳に、人のいなかった近くの部屋に連れ込まれた。
それがこの大広間だった。
祭礼も行う事もあるという厳かな場だと聞いていた梓娟は、こんな場所で始め出した眞佳に驚きを隠せなかった。
しかし瞬く間に結界を張られ、この場に不相応な行為を及んでいた。
「……放っておけば良い。それよりも今は私だけを見て」
「っ──」
そうして広い部屋に唇を熱く重ねる音を響かせる。
駄目、と言おうとしても口を塞がれているので言葉を発する事が出来ない。そのくせ聞こえてくる音はやけに耳に響いているので、梓娟は恥ずかしさでいっぱいだった。
──頭がくらくらとする……もう、何も考えられない……。
次第に苦しさで意識は遠くなっていた。立つことすらままならず、縋るように眞佳を見上げた。
「──」
眞佳が名を呼んだが、その言葉すらもう聞こえてはなかった。
けれど何故だかその声がとても心地良くて、梓娟は無意識に眞佳の首筋にしがみついた──。
天井から吊るされた御簾たちが、風に揺られてはたはたと靡いている。
ここで祓氏たちが断じ合う場として使われているが今は辺りに人の気配はなく、薄暗さが淋しさを感じさせる。
そんな厳粛たるこの降龍館の、そんな一室で微かな二つの吐息が歪に響いていた。
『眞佳様ー!どちらにおられますかー!』
朦朧とする意識の中で、遠くの方から声が聞こえてくる。目の前の男の名を探す声だ。
「……眞佳、さまっ、呼ばれて──っ」
知らせようとした唇は強引に塞がれて声を遮られてしまう。そうして何度目かの熱い口付けにくらりと目眩を起こした。
梓娟は魔物退治から帰ったばかりの眞佳にここへと連れて来られた。
梓娟は眞佳が出かけていたから「おかえりなさい」と言葉を掛けただけ。そんな他意のない言葉のどこが良かったのか。急に気分を良くした眞佳に、人のいなかった近くの部屋に連れ込まれた。
それがこの大広間だった。
祭礼も行う事もあるという厳かな場だと聞いていた梓娟は、こんな場所で始め出した眞佳に驚きを隠せなかった。
しかし瞬く間に結界を張られ、この場に不相応な行為を及んでいた。
「……放っておけば良い。それよりも今は私だけを見て」
「っ──」
そうして広い部屋に唇を熱く重ねる音を響かせる。
駄目、と言おうとしても口を塞がれているので言葉を発する事が出来ない。そのくせ聞こえてくる音はやけに耳に響いているので、梓娟は恥ずかしさでいっぱいだった。
──頭がくらくらとする……もう、何も考えられない……。
次第に苦しさで意識は遠くなっていた。立つことすらままならず、縋るように眞佳を見上げた。
「──」
眞佳が名を呼んだが、その言葉すらもう聞こえてはなかった。
けれど何故だかその声がとても心地良くて、梓娟は無意識に眞佳の首筋にしがみついた──。