伯父の命により、高潔すぎて『聖人』と噂の男の元へ行く事になりました。
 龍颯山へと戻る帰り道、梓娟はこれ以上のない恥ずかしさに苛まれた。
 体調の悪さを気遣われ、半ば強引に眞佳に抱き抱えられて空の道を進む羽目になったからだ。
 地に足が付いてない心許ない状況は恐ろしいもので、眞佳の青衣をぎゅっと握りしめて縋り付く姿は情けない。
 そしてそれを後ろから付いてくる蒼晏の突き刺さるような視線に、羞恥を通り越して苦痛を感じていた。

 ──なんて居心地の悪さ……。

 蒼晏はあれから何も言わず、何も聞いて来ず。しかし不満そうな表情に良くは思っていないのが分かる。

「飛翔は怖いかい?」
「……失礼な事をお聞きしますが、真っ逆さまに落ちたりしませんよね?」
「さぁ、どうだろう?」

 怯える梓娟を眞佳はくすりと笑った。
 
「私にしっかりしがみついていて──昨夜のように」

 聞こえてきた言葉に青ざめていた顔が一気に赤く染まる。
 そんな梓娟の様子を、眞佳は満足げに微笑んだ。
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