【改稿版】彼女はエリート外交官の求愛から逃れられない
「琴乃?琴乃なのね、ああ、よかった……夢じゃないのよね?」
お母さんは手を伸ばしてきたので、私は安心させるようにぎゅっと手を握った。
「うん、私よ。心配かけてごめんなさい。私は無事に戻ったから安心して」
「……」
お母さんは私の両手を握ったままじいっと見つめている。私は手を離すと携帯の写真を見せた。
「この写真を見て。留美ちゃんの結婚式とても素敵だったのよ。古いお城のお庭に皆を集めてパーティーだったの。おじさんとおばさんも今度日本に来たらお母さんと会いたいって話していたわよ」
「……もう会わなくていい」
「お母さん!」
「会うと思いだす。琴乃が行くのももう嫌よ。こんな思いは二度としたくないの」
かたくなな様子を見て、あちらのことは言わないほうがいいと思った。
「お母さんお腹すいてない?何か作るね」
「琴乃」
「なに?」
「……ううん、なんでもない……」
「じゃあ、少し休んでいて。ご飯できたら持ってくるね」
あっという間に日常に戻った。玲さんとのことは遠い夢の出来事に思えた。
彼との交際をお母さんが許してくれるとは到底思えなかった。
* * *
翌日から会社へ出た。
驚くことに本部長がいなくなっていた。突然また違う関連会社に行ったと灰原部長が教えてくれた。
「いや、僕が本社の方へ本部長のことでお話がありますと言ったらさ、本部長はそちらから異動になりますが、伺った方がいいですかと言われてね」
「え?」
「いや、いなくなるならそれで問題は解決すると思って、いつからですかって聞いたら本部長の出張から戻ってくる今日からだっていうじゃないか。驚いたよ」
「そうだったんですね」
「もしかして自分で本社に連絡した?」