【改稿版】彼女はエリート外交官の求愛から逃れられない
「へえー、運命的だな。今度ゆっくり聞かせろよ」

「わかった。そうだ、もし原口とのことを誰かに聞かれたら、否定しておいてくれ」

「了解」

 * * *

 その日の夜、仕事帰りに琴乃の家に行った。彼女には事前に何も伝えていなかった。

 本当は食事でもしたかったのだが、僕も仕事が忙しく、その時間はないとわかっていた。

 ただ、お土産を渡すついでに顔が見たかった。

 だから、明日の朝フライトがあるので、夜のうちにお土産を渡しに行こうと決めたのだ。

 琴乃は家のこともあるので、極力残業をせずに帰っていると聞いていた。多分家にいるだろうと思ったのだ。

 ところが、彼女は家にいなかった。

「琴乃がイギリスでお世話になった方ですか?すみません、聞いてなくて……」

 彼女のお母さんがガウンを羽織って出てきた。顔色があまりよくない。寝ていたんだろう。申し訳ないことをした。

「いいえ、こちらこそこんな時間にご連絡せず来た私が間違いでした。琴乃さんはもうお帰りかと思っていたものですから……」

「今日は会社の送別会とかで遅くなるようなんです」

「そうだったんですね」

 本当についてない。僕はお土産の包みを差し出した。

「これ、イギリスのお土産なんです。ご家族の分も入ってます。よろしければどうぞ」

 お母さんは申し訳なさそうに受け取ると、深々と頭を下げられた。琴乃みたいだ。

 彼女も助けた時、こうやって頭を下げていた。

「あの、琴乃とはどういったことでお知り合いに?」

「僕は普段ロンドンで勤務しています。日本での仕事で一度お目にかかり、イギリスの旅先で偶然琴乃さんと再会しました。そのあと、結婚式でも偶然お会いしました」

「そう、だったんですね……」

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