初恋を拗らせたホテル御曹司は癒やしの女医にだけ激愛本能を滾らせる


 クリニックには、遥奈と京香以外に、在籍している心療内科専門医が院長含め三名いる。だが休憩室には、他の医師の姿はない。

 院長は大学病院と兼任なので週の半分はいないし、他の二人はランチに出かけているからだ。

 となれば、用があるのは内科専門医である遥奈か京香のどちらかだろう。

 初診では、心身症の裏に身体的な要因がないか見極めるのに、血液検査などの内科的アプローチが必要になるからだ。

 様子を窺っていた遥奈の姿を見つけた倉科が胸の前で祈るように手を組み、大きな瞳をうるうるさせて縋るような眼差しを向けてくる。

「遥奈先生。ご指名で、午後から飛び込みの患者さんが一名いらっしゃるんですが……よろしいでしょうか?」

「指名」という言葉に、遥奈は再診の患者だろうな、と当たりをつけた。トラブルを防ぐため、クリニックのホームページには院長である沢渡(さわたり)宗治郎(そうじろう)の氏名と写真しか公開していないからだ。

「はい、大丈夫ですよ」

 遥奈は迷いなくニッコリと微笑んでみせた。

「いつも笑顔で快く引き受けてくださり、ありがとうございます。……はぁ、本当によかったぁ」

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