初恋を拗らせたホテル御曹司は癒やしの女医にだけ激愛本能を滾らせる


 深呼吸を繰り返す遥奈の耳許に零の囁き声が届いた。

「遥奈、大丈夫だよ。俺がついてるから。ほら、肩の力を抜いて、ね?」

 同時に、いつも零が纏っている、爽やかなベルガモットの香りに優しくふわりと包まれる。

(そうだ、零さんが傍にいてくれるんだから、しっかりしなきゃ……!)

 気を取り直した遥奈はぎこちないながらも零に笑顔を返した。

 程なくして取材が始まり、遥奈は婚約指輪の嵌まった左手薬指をぎゅっと握ってライターの声に意識を集中させていた。

「では、まずは新規プロジェクトについて伺いたいと思います。医療特化型ホテルの監修に、心療内科医である柚木遥奈先生が携わられるということですが……」

 遥奈は小さく頷いてから、声が震えないように少しだけ強い口調で答えた。

「はい。ストレス社会と言われる現代で、多種多様な症状で悩んでいらっしゃる患者様が心穏やかに安心して診察を受けられるように。また、リラックスして滞在できる癒やしの空間としての環境づくりを実現できるよう、各分野の専門家の方々と一緒に考えていく予定です」

 すると、ライターがうんうんと感心したように頷いてから、クリニックでの評判について言及してくる。

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