初恋を拗らせたホテル御曹司は癒やしの女医にだけ激愛本能を滾らせる


 父はそれを見届けると遥奈と零に向き直り、深く頭を下げる。

「みっともないところをお見せして申し訳ない。君には何と言ったらいいか……心より感謝申し上げる。遥奈のこと、どうかよろしくお願いします」

「当然のことをしたまでです。はい、こちらこそ、末永くよろしくお願いします」

 零と言葉を交わすと、父は兄を見ることなく部屋から立ち去った。

 そのせいか、応接室がやけに広くなったような気がする。

 静寂を取り戻した部屋には、茫然自失の兄と遥奈、遥奈に寄り添っている零だけが残されている。

 あんなに怖かったはずの兄は、酷く打ちのめされた様子で項垂れている。

 こんな兄を見るのは初めてだ。

 無理もない。

 父が総支配人を務め、兄が副支配人を務める、老舗ホテル『皇』が、世界第二位の外資系ホテルチェーン『オーシャンズグループ』に危うく乗っ取られるところだったのだから。

 その上、それを救ったのが、いきなり妹の婚約者として現れた、世界最大ホテルチェーン『インペリアル・インターナショナル』の御曹司——零だったのである。

 プライドの高い兄にとって、何よりの屈辱だったに違いない。

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