初恋を拗らせたホテル御曹司は癒やしの女医にだけ激愛本能を滾らせる
最近では珍しくないゲリラ豪雨だけど、こんなタイミングで降らなくてもいいのに……
寂しい気持ちに追い打ちでもかけられた気分だ。
「……とうとう降ってきましたね。それにしても……凄い土砂降り」
思わず零した声にも寂しさが滲んでいたのかもしれない。
遥奈を宥めるように頬を擦り寄せてきた零が甘やかな声音で囁いた。
「The heavens have opened」
不意打ちの英語に思考が追いつかず、目をパチパチと瞬かせる遥奈に、零が爽やかな声音で解説してくれる。
「今みたいに、突然降り出した雨のことを言うんだけどね。この『heavens』っていう単語は『天』という意味で用いられてるんだ。天が開いて一気に落ちてきた、みたいな感じかな。神や自然からの祝福や啓示をもたらすっていう、宗教的な意味合いもあるんだけど。そう考えると、前向きだし、洒落てるよね」
「へぇ、初めて知りました。『heavens』を使うなんて、お洒落だし、素敵ですね」
零の説明に、感心し共感した遥奈が笑顔を返すと、零もとびきりの微笑みを返してくれる。
たちまち遥奈の心から憂いが消えて、あたたかなもので満たされてゆく。
「そうだね。けど、俺にとって、遥奈の笑顔ほど素敵なものはないよ。じゃあ、行ってくるね」
そうして続け様に、頬に触れるだけのキスと甘い言葉を残した零は、今度こそ部屋を後にしたのだった。