初恋を拗らせたホテル御曹司は癒やしの女医にだけ激愛本能を滾らせる
「遥奈の話を聞く前に、まずは俺の話を聞いて欲しいんだ。けど、どうしても抜けられない仕事があって。少し時間をもらってもいいかな?」
そう言えば、紫帆と打ち合わせがどうとか言っていた気がする。
紫帆の存在を思い出した途端に、遥奈の胸にモヤモヤした感情が蠢きはじめる。
そんな自分に戸惑いを覚えつつも、遥奈は了承した。
程なくして最上階へと降り立った遥奈は、零に導かれるままにスイートルームへと訪れていた。
このホテルで落ち合うと約束してすぐ、予約を取っていたらしい。
他のフロアとは違い、毛足の長いカーペットが敷き詰められており、まるで雲の上でも歩いているようだった。
部屋に入るなり遥奈はエレベーター同様零にふわりと抱き寄せられた。
今度は、後ろから抱きしめられる形で、正面の大きな窓に広がる都心の景色を眺めながら……
「仕事なんて放り出して、遥奈をこのまま独り占めしていたいな」
「そ、そんなのダメです」
「うん、わかってるよ。でも、まだ時間があるから……少しだけ」
零と頬を寄せ合い、そんなやり取りをしているうち、ますます離れがたくなってくる。
遥奈の心情を代弁するかのように、大きな窓に激しい風雨が打ち付けられた。