陽炎
ブルーのブラウスにチェックのネクタイ、紺色のブレザーに、同じく紺色のボックススカート。
私はこの制服が着たくて、少し背伸びをしなければ入れない高校に、頑張って合格した。
それから、もう二年が経つ。
私の重たい前髪とマスクは、教室にいても私を隠して続けている。
私に近づいてくる人は、その先の友達に声をかけ、笑顔を作る。
私は、視界には入っていないのだ。
「それじゃあ、今日は委員会を決めるぞ。まず学級委員から」
担任の先生は、クラスに向かってそう言った。
このクラスになってから一か月。
大抵の人は、もうこのクラスでの立ち位置を確立している。
リーダーになりそうな人は、みんなに囃し立てられて、あっという間に学級委員が決まる。
学級委員になった人は、担任から仕事を引き継ぎ、次々と人気の委員会が決まっていった。
「最初はグー、じゃんけん、ぽん」
「あー、負けちゃった」
そう言った人の周りの空気が、ゆらりと小さく震えた。
最後に残ったのは、美化委員だった。
これは学校あるあるだ。
毎年のように、美化委員に手を挙げる人はいない。
「ケン、どう? 美化委員」
「美化って放課後、仕事多くね? 無理だよ。俺、部活あるもん」
「そうだよなあ。俺たち、もう二年だもんなあ……」
学級委員は名簿に目を落とした。
「部活をやっていないやつ…」
目線が名簿の下から順に上がっていく。
「遠野さん…」
学級委員は、「遠野って誰だっけ?」と言うみたいに、教室中に視線をさまよわせた。
私だと気づいた人が数人、遠慮がちにこちらへ視線を投げてくる。
「遠野さん、美化委員、引き受けてもらえないかな」
それでも、学級委員の申し訳なさそうな顔を見て、私はコクリと小さく頷いた。
いつものことだ。
目を上げた学級委員は、「それから、もう一人……。朝比奈、どうかな?」と、一人の男子生徒に目を向けた。
彼もまた、小さく頷いた。
朝比奈 彗(あさひな・すい)。
彼も、クラスから身を隠すように、メガネとマスクで顔を埋めている。
そして――
私と同じく、身体に陽炎を纏っているのだった。
私はこの制服が着たくて、少し背伸びをしなければ入れない高校に、頑張って合格した。
それから、もう二年が経つ。
私の重たい前髪とマスクは、教室にいても私を隠して続けている。
私に近づいてくる人は、その先の友達に声をかけ、笑顔を作る。
私は、視界には入っていないのだ。
「それじゃあ、今日は委員会を決めるぞ。まず学級委員から」
担任の先生は、クラスに向かってそう言った。
このクラスになってから一か月。
大抵の人は、もうこのクラスでの立ち位置を確立している。
リーダーになりそうな人は、みんなに囃し立てられて、あっという間に学級委員が決まる。
学級委員になった人は、担任から仕事を引き継ぎ、次々と人気の委員会が決まっていった。
「最初はグー、じゃんけん、ぽん」
「あー、負けちゃった」
そう言った人の周りの空気が、ゆらりと小さく震えた。
最後に残ったのは、美化委員だった。
これは学校あるあるだ。
毎年のように、美化委員に手を挙げる人はいない。
「ケン、どう? 美化委員」
「美化って放課後、仕事多くね? 無理だよ。俺、部活あるもん」
「そうだよなあ。俺たち、もう二年だもんなあ……」
学級委員は名簿に目を落とした。
「部活をやっていないやつ…」
目線が名簿の下から順に上がっていく。
「遠野さん…」
学級委員は、「遠野って誰だっけ?」と言うみたいに、教室中に視線をさまよわせた。
私だと気づいた人が数人、遠慮がちにこちらへ視線を投げてくる。
「遠野さん、美化委員、引き受けてもらえないかな」
それでも、学級委員の申し訳なさそうな顔を見て、私はコクリと小さく頷いた。
いつものことだ。
目を上げた学級委員は、「それから、もう一人……。朝比奈、どうかな?」と、一人の男子生徒に目を向けた。
彼もまた、小さく頷いた。
朝比奈 彗(あさひな・すい)。
彼も、クラスから身を隠すように、メガネとマスクで顔を埋めている。
そして――
私と同じく、身体に陽炎を纏っているのだった。