笑顔の仮面は君の前だけ壊れる

暗闇の告白

第25章 暗闇の告白

コツ……。

コツ……。

足音はゆっくりと近づき、非常灯の光の中で止まった。

黒いコート。

深くかぶったフード。

顔は影になり、表情は見えない。

「誰なんですか!」

私が震える声で問いかけると、その人物は静かに笑った。

「やっとここまで来たね。」

男とも女ともわからない声だった。

朝比奈さんが一歩前へ出る。

「もう終わりにしろ。」

「終わり?」

その人物は肩を震わせて笑う。

「終わるのは、これからだよ。」

神崎主任は私を背中へかばいながら言った。

「琴葉、絶対に前へ出るな。」

すると、その人物はゆっくり私を指差した。

「白石琴葉。」

名前を呼ばれた瞬間、胸が締めつけられる。

「君は佐伯真奈によく似ている。」

「……え?」

「だから選ばれた。」

意味がわからなかった。

「選ばれたって、何のために?」

沈黙。

そして、その人物は低くつぶやく。

「真実を知るため。」

その瞬間、ホテルの非常ベルが鳴り響いた。

けたたましい警報音が廊下を包み込む。

一瞬だけ視界が赤く点滅する。

その隙に、黒いコートの人物は走り出した。

「待て!」

朝比奈さんと神崎主任が同時に追いかける。

私も走ろうとした、その時。

足元で何かが光った。

小さな銀色のペンダントだった。

拾い上げると、裏には細い文字が刻まれている。

『M.S』

「……真奈さん?」

思わずつぶやく。

ペンダントを開くと、中には小さく折り畳まれた紙が入っていた。

震える指で広げる。

そこには、たった一行だけ書かれていた。

『犯人は、証拠ではなく人の記憶を消している。』

その言葉を読んだ瞬間、私はすべての出来事に共通点があることに気づき始めた。

写真は消えた。

動画も消えた。

記録も書き換えられた。

でも――。

誰かの記憶だけは、消すことができなかった。

私はペンダントを強く握りしめ、静かに決意する。

「もう逃げない。」

真実は、すぐそこまで来ていた。
< 25 / 30 >

この作品をシェア

pagetop