笑顔の仮面は君の前だけ壊れる

もう1人の視線

翌朝。

昨夜の出来事が頭から離れないまま出社すると、デスクの上に小さな封筒が置かれていた。

中には一枚のメモ。

『誰も信じないで。』

短い文字だけ。

差出人の名前はなかった。

「どうしたの?」

突然声をかけられ、私は慌ててメモを引き出しへしまう。

朝比奈さんだった。

「顔色が悪いよ。眠れなかった?」

「少しだけ……。」

「無理しないで。今日は僕がフォローするから。」

その笑顔は昨日までと何も変わらない。

だからこそ、わからなくなる。

本当にこの人なの?

それとも、誰かが私を怖がらせようとしているだけ?

昼休み。

気分転換に屋上へ向かうと、スマートフォンが震えた。

知らない番号から写真が届く。

そこには、今この瞬間、屋上に立つ私の後ろ姿が写っていた。

思わず振り返る。

誰もいない。

震える指で画面を見つめると、続けてメッセージが届く。

『振り向いても、もう遅い。』

その瞬間、背後で扉の開く音がした。

「白石さん!」

聞き覚えのある声。

振り返ると、息を切らした朝比奈さんが立っていた。

「ここにいたんだ。探したよ。」

安心するはずなのに、胸の鼓動は速くなるばかりだった。

――私を探していたのは、彼なの?

それとも、写真を撮っていたのも……彼なの?
< 6 / 30 >

この作品をシェア

pagetop